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2011年12月24日 (土)

『足もとの自然から始めよう』

先日のシンポジウムで上田壮一さんがある本を紹介してくれた。そこでは聞きそびれたので、夜の懇親会の時に教えてもらった。上田さんは、「ぜひ、読んで見てくれ」と、力を込めて語ってくれた。

さっそく本を注文し、それが今日届いた。100ページほどの本。夕食を終えてから読み始め、中に引き込まれ一気に読み終えてしまった。

その本は、デイヴィド・ソベル著の『足もとの自然から始めよう』。
原題は、「BEYOND ECOPHOBIA』。「エコ嫌いをなくす」というような意味らしい。ECOPHOBIAは自然恐怖症と訳されている。

直接的には子どもへの環境教育について書いた本だ。

環境教育の場では、例えば地球温暖化では、「地球温暖化は二酸化炭素が原因で、こんな仕組みで温暖化が起きます。温暖化が進むと世界はこんなことになってしまいます。」といった話の展開が多い。そして、地球が大変なことになってしまいますから、みなさんで温暖化防止を進めましょう、で終わる。

こんな話では、子どもたちに恐怖心や絶望感をうえつけてしまい、環境問題へ向ける目を閉ざさせ、耳をふさがせてしまう。では、どうすればよいのか?
そういったことが書かれているのが『足もとの自然から始めよう』だ。

子どもたち、特に小学校4年生くらいまでの子どもたちには、抽象的なことや概念的なことを教えるのではなく、自然との付き合い、それも身近な自然、足元の自然との付き合いが大切である。この本はこう主張する。
自然と付き合ううちに、子どもは自らの感覚と頭脳で、いろいろなもののつながりやしくみを学んでいく。そして、何が良いことで、何が悪いことなのかわかるようになる。さらに、良いことを進めるための行動まで起こしてしまう。

名著だ。今夜は一気に読んでしまったが、繰り返しじっくり読みたい。

先ほど、子どもへの環境教育の本だと書いた。
だが、子どもの環境教育にたずさわる人だけでなく、子育て中の人も、そして最も読むべきは、ぼくらのように環境問題に取り組んでいる人たちだ。

ぼくらは正しいものは正しい、と思ってしまいがちだ。そして論理性も重視する。事実も重視する。多くの人に、今、何が起きているのか知ってほしいと思っている。
だが、やりかた次第では、ぼくらのやりたいことと、受け手の間には大きなギャップが生じてしまうということだ。

これからぼくらが進める取り組みのやり方を考えるにあたって、とても大きなものを与えてくれた本だった。

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